春 虚/塔野夏子
春の白い空には
いつも浮かんでいる気怠い書体の半透明の文字
“Anywhere out of the world”
(ボードレールとシャガールと中原中也の三角形)
それを見あげていると
私の中の抒情と抒事が
かすかに青く軋むのだ
そしてその軋みに黄色いフリージアの香りが
あえかに絡みつくのだ
“Anywhere out of the world”
白い空へと
ツァイガルニク効果が幾重にも
谺するのだ……
ツァイガルニク効果:達成されたことよりされなかったことの方が記憶に残る現象
[グループ]
戻る 編 削 Point(3)