淡水系/ただのみきや
 

すべてが水に帰し
そこに残ったなにかが
なにであったかなんて
もう気にすることすらなくなったなにかがおれなのだ

胎児のようにどこかに繋がったまま
ゼラチン状の星雲が一斉にまばたきして

ああペルソナよ切れ切れに朽ちて道端の花の根に添い寝しろ
水の素足に微睡みながら二度と語らない揺らめく心の断片として

気がつくと女の頬に書いていた
開かれた日記帳から淡水の音(ね)の響き
白雪姫が見ている
夜叉ヶ池の主が


   
*「夜叉ヶ池」は泉鏡花の戯曲。
   「白雪姫」は戯曲に出てくる龍神の姫の名。



                  《淡水系:2017年3月22日》









戻る   Point(12)