郷愁を呑む/stereotype2085
 
 郷愁を呑む
 換気扇は回り カタカタと音を立てる
 朝 起きがけの夢の跡とコーヒーの味は苦い
 
 悪友の葬儀は明日への吉兆
 出かけるのは僕
 喉元を腫らして タテガミのように波打つ髪を撫でる

 顔を洗う僕の記憶に飛び込むのは母の笑顔
 ピアノの音がぶつぎれに聴こえてくる
 ピアノを弾いたのは僕

 音色が終わる前に僕は記憶を断つ
 亡き母の写真を見なくなり遠く日が経つ
 僕の胸には郷愁はない


 換気扇が回り カタカタと音を立てる
 寝ぼけ眼(まなこ)には太陽の陽射しはひりつく
 
 今日僕は悪友の葬儀に足を運ぶ
 火葬を待つのはその彼
 僕は
[次のページ]
戻る   Point(4)