夜のキリン/ただのみきや
星ひとつ 星ふたつ 静かに尽きる夜
キリンは街をさまよい歩く
まっすぐな線がまだいくつも
引かれていない 幼子の 夢の灯を
螢の群れる木のように 揺らしてそっと
キリンは街をさまよい歩く
アフリカより 硬く冷たい道を
どこまでも四角く区切られた世界を
夜より深い瞳をうるませて
キリンは街をさまよい歩く
その瞳の奥へ奥へと流れ下る
暗い 河面に
もう帰らない灯が遠く遠く消えて往く
キリンはさまよい歩き続けて
巡らされた闇の囲い
静かな水場へ辿り着く
もう見ることをやめてしまったゾウのため
記憶よりも
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