雑草嵐/片野晃司
しておこうかな。あるいは、夏になればまたぴかぴかの舗装の下であたたかくなって、街路樹の根っこの先をさわさわとにぎったままでなんにもしないで寝ちゃおうかな。それからどうでもいい夢でも見ようかな。
舗装の上を歩いていくのは夢の中だから。お店に入って買い物をするのは夢の中だから。夏になればまた雲が次々と覆い被さってくるからバッグも傘も投げ捨てていって、雨つぶの狙い撃ちひとつぶひとつぶを完璧に避けていって、舗装の割れ目から蔓草が暴れ出てきて足首に絡みつこうとするから靴も投げ捨てていって、街路樹は道を塞いで、アスファルトは爆発して粉々になって、そんな攻撃のひとつひとつを完璧に避けていって、けものになって背骨は細長く弓なりに伸びて、雑木林を抜けてくさむらをかきわけていって、手も足もひっつき虫だらけにして、ここは道だったって忘れないって、ずっとずっと忘れないって、そう遠吠えしながら丘の上まで駆けていって、それからほらあなを見つけて丸くなって眠る。
(詩誌hotel第二章39号 2016年11月)
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