/ehanov
 
暑さが背中にへばりつく。雲の切れ目から溢れ出てくる強い陽射しから逃れようとするアキレス腱には鈍い痛みが走る。
密閉された車中ではしあわせのしわざがかかっていて、懐かしいと思った。
普段着を着てるはずだろう君の、今日が何事もなければいい。いつ何時の何処其処で、相変わらず元気でいてくれてますか。
何かの始まりを予感するとき、路上を歩く人や、道端で談笑する人といった風景は、深淵に潜む無法者の餌にもなり得ず、差延の排泄物として回帰の機会も与えられず通り過ぎてゆく。
そして、いつの間にか、指の隙間から砂がこぼれている。
さしあたって、立ち上がって駆け出すには時が熟していなく、まずは踵の方向について、苛烈な沈黙を緩やかに佇ませるあなた自身に、徐に白状しなければならない。
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