喪失/少年(しょーや)
 
くて自分を維持するのに必死だった時期だった
仕事も生活もロクにやりくり出来ず
何度も職を変えていた時期だった
誰かの事を考える余裕が無かった3〜4年間の最中の時期だった
今振り返ってみるとどうやらその頃に、大きな地震が起こっていた

ごめんなさい

あの時に死んでおけばよかった
あの日に死んでおけばよかった
沢山の人が誰かを思い、誰かのために祈っている
人が死ぬことはとても悲しい事だ
悼む気持ちはやさしい
あたたかい
名前も顔も知らない誰かを悼む事はとても美しい
でも、俺があの日に起こった現実を思おうとしてもしっかりとピントが合わない
まるで嘘をついてしまっているようで
悼む事が、悼もうとする考えそのものが申し訳なく思えてしまう

この先しっかりと思い出せる日は来ないかもしれない
散り散りの、残りの記憶だけは刻み込んでおく
『それだけば絶対に間違っている』と。
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