包音/木立 悟
雪に立つ輪の空洞を
冷めた光が過ぎてゆく
無言と無音の歩みは終わり
道は網目の匂いに浮かぶ
さくさくと昇り
空の火の交点を覆う音
あたたかな臓腑の高鳴りが
雲のくぼみに響いている
花びらが水面にあつまり
葉をひとつずつ
陽をひとつずつ運び
水底に歌を描いている
まわり ちらばり
かがやく手ほどき
駆けてゆく子からこぼれる穂
言葉に織られた貫頭衣
風を含んでふくよかに舞い
ひろがる光はさらにひろがり
さらにまばゆくめぐりをめぐる
埋立地から雨は去り
鳥は道のはずれに降りる
水の奥の華やぎを
轍の銀をふちどる音
鏡に重なり 離れては
景の波をくりかえす
割れた火の上
金色の匙
空に沈む
気泡のいくつか
土の祭
空の祭を通りぬけ
音は還る
子の手に還る
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