言葉でできている/水宮うみ
 
「ポジティブ過ぎない?」
「いろんな意味合いでのタクとして生きれるなら、タクであり続けるのもそう悪くはない」
「あなたの名前に意味を込めなくて良かった!」
「ところで、登場人物に名前が必要だと誰が決めたんだろう 名前が無けりゃ、俺は誰にだってなれたのに」
「さぁ。まぁ登場人物の一人に過ぎない存在に誰にだってなられたら面倒くさいでしょ。こうして今この会話を読んでいる人にも名前はあるだろうし、書いている人にも名前はある。この文章の読者も作者もなにか他の物語の登場人物に過ぎない。作者はきっと、小説の登場人物には名前が必要だっていう定型通りに、私達に名前を付けただけ。そもそも、言葉が必要だって誰が決めたのかしら」
「意思を伝え合う為だろ」
「タクは言葉好き?」
「なんとも言えん。好きな言葉もあるし、嫌いな言葉もある」
「私もよ」
「俺を書いているのは誰だ」
「作者」
ミケはそう言った後、微笑みを浮かべて
「あなたは言葉でできているのよ」と言う。


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