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梓ゆい
捨てしまったはずの着せ替え人形。
何故だか会いたくなって
押入れと物置の中を探し回る。
埃まみれの一斗缶
蓋を開けてみれば
無くした筈の人形の靴
綺麗なままのワイングラスの横に
ちょこんと置かれていた。
まるで迷子の子供をあやすような不思議な構図
優しかった父のようだと
ワイングラスを眺めてほくそ笑む。
私の隣に父はもう居ない。
桜が咲き始める前の晩
母と私と妹二人にさようならをして
祖父母とともに
先祖の元へと旅立った。
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