土曜日/北井戸 あや子
 
げんなりと頸を片手に引っ提げて
プロパンガス運びもようやく慣れてきたおれは煙草の残りと、調べてもない内臓の数値を気にしてみる
べったりした夏草に顔を埋めてやれば
青臭く初夏がめぐり、ぐじゃぐじゃに血管が騒ぐ
目の前の真っ黒い百足に気付いて叫び声を飲み込む
唾が青臭く喉をくぐる
セメント塗り固めた日付をドブ池放り込んで
浮浪者の夜は目ぇ剥いて今日を喝采
爪に溜まった皮膚と垢と汚れ
日に日に潰していく細胞の疼き
どん詰まりの路地でさぼりながら
落ちている死んだ蝉におのれの生を重ねる
引っ提げた頸は今日も憎たらしく安泰
肉屋の曲がった角のポリバケツに居着いた
血糊に染まった髪は
今日も愉しげに揺れながら
換気扇の、この町の、おれの肺の、塞がれたすべての汚濁を受け入れる
なあ、それ、あんたが留めとくのかい
汚れた鼻を啜ったら、ぐじゃぐじゃとまた血管が騒いだ
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