開拓村/山人
 

 夜中の尿意が嫌だった。トイレは一階にあり、昔墓だったとされたところで、下はコンクリの冷ややかな場所だった。薄暗い白熱電球をそそくさと点け、パンツに残った尿を気にもせずダッシュで二階に駆け上がった。
 土曜の午後になると開拓村の父たちが迎えに来る。父達の踏み跡は広く、カンジキの無い私たちはそこを踏み抜くと深い深雪に潜ってしまう。長靴の中には幾度となく雪が入り、泣きながら家にたどり着いたのである。
たらいに湯を入れたものを母が準備し、そこに足を入れるのだが軽い凍傷で足が痛んだ。痛みが引くと父の獲ってきた兎汁を食らう。特によく煮込んだ頭部は美味で、頬肉や歯茎の肉、最後に食べるのが脳みそであった
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