美しいひと/日時計/ただのみきや
目鼻立ちの麗しさではなく
口もとからふと匂い立つ色香でもない
清水の底から沸き上る泉のように円やかな微笑み
それは微笑んで見せようとする思いの仕草が
表情を作り出すよりもどこか深いところの水脈から
静かに運ばれて 中に満ち
やわらかく綻びながら
決して開くことのない蕾のようにすべて
秘めたまま
誰のためでもなく
だからこそ惜しみもなく
人々に見捨てられた土地の
瓦礫の陰にそっと揺れる草花のように
たまたま目をとめた者が呼吸すら遠慮しがちに
気が付けば もう少し あと少し
目と心を側に寄り添わせたくなって
手折らずに ただ心の
荒れ果てた心の中の一番良い土地へ
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