水族館/伊藤 大樹
ラベンダー色の海に身をひたし
悲しみを咀嚼した
ガラスの隙間から
誰かのページをめくる音がきこえる
屈折して
青い血が飛び散る
卵の殻のなかではぐくまれた
そうしていつか 荒涼たる浜辺へ降り立った
うつくしいものは
いつも知らないうちに腐っていく
遠い日の出来事
帰り支度する季節に
ひとり靴紐を結び直した
裸足で戯れた浅瀬に
記憶が亡霊のようだ
わたし(たち)は一体何にゆられて
何を夢見るだろう
名前も知らない魚が
泳いでいるのを見ていた ある午后
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