優しい雨/HAL
 
倦怠感を憶えて
窓を開ける

細い絹糸のような
雨がいつのまにか
降っている

雨は悲しみに
余りにも似ている
だから私は
雨が好きなのだろう
だから私は
悲しみが好きなのだろう

いいんじゃないだろうか
悲しみを幸福よりも
愛する者がいても

生はどの生であっても
悲しみを背負っているのだから

生はほとんどが
悲しみのなかを往く途なのだから

そのために涙はあるんじゃないか
食いしばる歯があるんじゃないか
噛み締める唇があるんじゃないか
握りしめる拳があるんじゃないか

悲しみを知らない希望は
すべて贋物にしか過ぎない
だから誰もが
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