寒い部屋/
梓ゆい
娘に触れられて
少しだけ水に戻る手の甲の霜。
寒い部屋の中では一瞬で元に戻り
組まれた父の手を冷たくした。
父はもう人では無い。
今朝水揚げされた魚河岸の魚のように
足を縛られ逆さづりで血を抜かれる鶏のように
ただの塊になったのだが
それでもそこにいるのは
優しかった愛する父。
かじかむ手を伸ばし
厚手のコートを羽織る娘はもう一度
硬く白い父の手を強く強く握り返す。
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