ruby/もり
啄木鳥が 脳天を
穿つ ヒールの音
充電切れの端末から
伸びるヘッドホンで
耳をふさいだ少年
急所は隠すもので
隠したところから
急所となる
先頭車両の不文律
スーツの背中には
古傷のような皺
アイロンでは
伸ばしきれない
皮肉とためらいが
地団駄を踏む 朝
36.8と表示された
体温計
ぼくは消える
絶対零度の夜にうまれた
太陽に飼われて
ネオンを食べている
未完成のドミノを
言葉はいたずらに
倒そうとする
私の喉はまだ乾いていて
だから私は眠れない
テーブルに叩きつけられた
グラスの破片から
逃れるより困難な夜は
交差点で
飛び散った夢よりも 無口に
残酷に
助手席の窓から 女がまた一匹
金魚を吐き出しては
アスファルトに明滅する
昨日 今日 明日
「なぜ ぼくたちは
出逢うことがなかったのか」
そう叫びながら
電車の
閉まりかけたドアに
突進していく鴉も
あれは
朝か
夜か
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