暮らし/猫の耳
 
出会っても
離れるのは必至
二人はまるで孤高の猫

月の隣の星もう見えない
一週間前まで
ぴったりと
寄り添っていたのに

泣きたいのに
笑っている
右手は探している
手放してしまった糸の端

今朝の卵焼き
ちょっとしょっぱかったね
そう言って見上げた笑顔は
車窓の景色みたいに
記憶のずっと後ろの方に
行ってしまった

洗顔に歯磨き着替え
財布に携帯に定期
いつもと同じ朝なのに
いつも忘れ物した気分
でも
振り返らずに家を出る

傘忘れてるよ
ふいに聞こえる声は幻
きっとこんな暮らしにも
慣れていく

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