少年/呼無木
 

      夜半から雨が降ると
     坂は魂の匂いで蒸せ返る

     幾百匹のカエルの白い腹
     幾百匹の紫にふやけたミミズの肉片
     幾百匹の忘れられた肢体

     立ち昇る新鮮な死の匂い
     湿っぽい肉の匂い
     胸いっぱいに吸い込みながら 朝
     わたしは坂を下る
     この古い坂はわたしの通学路なのだ

     幾百匹のカエルの白い腹
     幾百匹の紫にふやけたミミズの肉片
     幾百匹の忘れられた肢体
     彼らの抜け殻を踏まぬように

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