それが旅立ちなら/ベンジャミン
 
張りつめた風の端
やわらかい記憶の糸をほどけば
泣いてしまうかもしれない
あなたは

ほころぶ桜の薄い花びら
その散り際の光景を思い浮かべるとき
過ぎた時を惜しむ眼差しで
未来を見つめる

何かを約束することで
つなぎ止めているいろいろを
堅く結んだ口元が
不意に呟いた

別れは足音もなく通り過ぎる
押されて踏み出した他の道には
やがて待っている別の
さよなら

その度に知る失うことの意味を
何度も受け止めきれずにこぼしても
また

巡ってくる
ゆっくりと引かれてゆく糸は
輪になるために角をけずって
空白をつなげようと

あなたを

出会いに導く


その頃
別の花びらが静かに枝を離れ落ちても









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