がらすゆき/ただのみきや
フロントガラスの雪
百や千もの指が
百や千もの詩を書こうとして
なにも書けず
スルスル流れ
見通しの良い隔たりは
光景だけを素通りさせる
百や千もの天の指紋が
色も形も失って
理由を忘れた涙のように
指という指が
いっせいに赤く染まる日
ぬるくてかたい心の包皮を
べっとり 重くしめらせて
耳目も口も
窓という窓
扉という扉が
血糊で塗り込められた
木偶の棒は
抱えた祈りに腹を裂かれ
黄金はない
廃物の 幸福の 殻 その透き通った 軽さの
どこに
おまえはどこに
空虚が
いっぱいに満ちていた
ジリジリと時に炙られても
目減り
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