手/ただのみきや
 
い連中のために犠牲を払ってどうする?
「やめろやめろ無駄なんだから
友人は答えた
「できないね それだけは
彼は自分の手をわたし手にしっかり重ねると
言った
「もしそんなことをしたら
「きみとの友情を終わりにしなければならない
そうして立ち上がると
店から出て行った
すると店の灯りがスーっと落ちて
冷たい空気が辺りを包み――

――目が覚めた 夜明け前
布団を首の辺りへ手繰り寄せ
あの手の
重ねられた手の
感触がまだ
深い傷痕が残るあの手の



              《手:2017年2月18日》








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