きのこの刺繍/初谷むい
 
混じった汗が吹き出し、二、三日は安静にしていなければいけない体で、付き合い始めた頃僕があげたミルクキャンディーを無理して食べるものだからミルクキャンディーは勢いよくさだめの口から発射され僕の左目を貫いた。左目は失明したが当たりどころが良かったので僕は生きている。これに関してはさだめは悪くない。悪いのかもしれないけれど僕にそれを罰する権利はない、さだめはぼくに嫌われないために一生懸命だっただけなのだ。僕はさだめのために毎晩大学が終わったらきのこの刺繍をする。なるべく美味しく楽しく食べて欲しくて、きのこ図鑑の中で色合いの美しいものを選んで作っている(幸い、世の中のきのこは僕の思っていたよりもずっと多く
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