きのこの刺繍/初谷むい
多く、しばらくは美しいものだけをさだめに与えることができる)。さだめは僕に刺繍をやめてほしいという。あたし眠らなくてよくなったから、ずっと刺繍できるからもう人間じゃないからメンタルもおかしくてもうみどりのこと紙切れにしか見れないし、みどりのことは好きだけどあたしおかしいから、みどりは刺繍なんかしなくていいよ、うまくできないけど愛してるからみどりのこと、眠ってほしいんだよ、ちゃんと、とさだめは言う。うるさいと僕はたまにさだめを殴ったりする。さだめの肌は繊維っぽくてがさがさするから、僕の手は少し擦り剥けてかわいいさだめの頬がすこし僕の血で桃色になる。ぼくはさだめの顔が好きだ。右の、左に比べて細すぎる目
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)