紅の裏切り者/藤鈴呼
 

流れた血の意味を考える
原因ならば幾つも有る
素手で硝子を強く持ったからだ
悔しくて握りしめた拳の先に
切っ先の鋭い物体が飛び出していたからだ
或いは その涙の色が
部屋の赤玉に 呼応したのかも 知れぬ

時が流れて
言う事が転がる相手を本気で恨むのは
実に下らないことだと考えた
それは 時間の無駄だから
時計の針ごと 排除してしまおうと
鼓動が聞こえぬ角度に 枕を持ち替える

あの日見た夢には
可愛らしさの欠片も存在していなかったから
驚くくらい冷静に瞳を閉じた瞬間を
思い出してしまうくらい
酷く青い雪が 視界を染めていたけれど
振り返る余裕すら なか
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