剽窃/白島真
な叫びのなかで、
赤い魚たちを殺すだろう。欲望の主体を問いながら。
剽窃された言葉はそこに在り、眼は剥離岩のように簡単にだまされる。
神は単なるひとつの方向であり、他者との距離を測るためのものに過ぎない。
それはあなたを愛すること、あなたに愛されることに、どこか似ている。
愛を海の深さで推し量ることは、すでに言い尽くされている。
剽窃された言葉はそこに在り、剽窃された人と共にある。
白い食卓の時間、猫語を話すことにどんな意味があるだろう。
紫陽花やどくだみが喩となりまた枯れていく、その色だけを残して。
『しなびきつた心臓がしやべるを光らしてゐる』*
*朔太郎「月に吠える」より「かなしい遠景」
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