剽窃/白島真
 
な叫びのなかで、
 赤い魚たちを殺すだろう。欲望の主体を問いながら。

 
 剽窃された言葉はそこに在り、眼は剥離岩のように簡単にだまされる。
 神は単なるひとつの方向であり、他者との距離を測るためのものに過ぎない。
 それはあなたを愛すること、あなたに愛されることに、どこか似ている。
 愛を海の深さで推し量ることは、すでに言い尽くされている。
  
 
 剽窃された言葉はそこに在り、剽窃された人と共にある。
 白い食卓の時間、猫語を話すことにどんな意味があるだろう。
 紫陽花やどくだみが喩となりまた枯れていく、その色だけを残して。
 『しなびきつた心臓がしやべるを光らしてゐる』*
  

    *朔太郎「月に吠える」より「かなしい遠景」 
戻る   Point(21)