ボトルシップ/本田憲嵩
 
赤茶けたカーテンを捲って覗く
窓のむこうの電柱
電球の切れかかった外灯が
ぱちぱちと
青白く点滅しているのを きみはぼんやりと眺めている
けれども そのように
いずれパチンと爆ぜて
途切れてしまうようなことからは
直視をこばんで
きみはいつまでも逃避をしつづけている


きみの部屋のなかには
そこらじゅうに
無数のちいさなボトルシップが積み上げられていて


きょうも
カフェイン依存症のきみの
白いコーヒーカップの底には
沈殿して
固まったままの茶色い粉末が
くすんだ匂いで「停滞」をつねに暗示している
きみは机の上のネットにつないだPCのまえで
頬杖
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