娼婦だった頃。/千翔
 
あたしが娼婦だった頃、いつもお客様に「奉仕」をしてあげていた。
禿げ上がった、どこかの社長。「えらいさん」を相手に。
顔を見ただけではきそうな程に脂ぎってて。


あたしはむなしく、おじさんの言う通りに「奉仕」をした。
好きでもない男と戯れた。
好きでもない男に抱かれた。
あたしが娼婦だったから。世の中の汚れた女。


悲しみに暮れようとしても、しょうがないで割り切った。
お金のためだけに。あたしはココロをなくした。



ある日、涙がでた。勝手に。
ぽろぽろ。
辛いこともない、今お金もある。
でもとまらないのだ。首を捻って考えた。
悲しいことがあるのかと。



「娼婦」という響きがこわかった。
ある日。こんなことを言われた。
「娼婦なんて、いやらしい。そんなのやってる人の気が知れないよ」



穢れた女。蔑まれた。軽蔑の目がいつもつきまとった。
お願い。あたしをみないで。こわいこわいこわい。
好きでもない男に肌を許す。純愛もなく、後腐れもない。




悲しい女と笑ってください。






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