炎の遊戯/ただのみきや
一枚の写真が燃えている
黒い鉄の花びらの上
ひらめく炎をその身にまとい
そりかえる
水蒸気と煤があいまって
白くにごった煙とともに
封じられた時間も漏れ出して
霧散する
平面の中の奥行 かつて
隣りあう時と場所に通じていたはずの
季節を被ったままの景色が
光に彫刻された懐かしい顔が
不滅とも錯覚され
二次元へ沈められたフォルムが
消失し
ひと匙にも満たない灰
一通の手紙が燃えている
炎は 便箋と 記された文字を
込められた 思いを
読むたびに少しずつ姿を変えながら
こころに訪れた人
その不可視の 眠れるからだを
静かに とても美味そうに 食んで
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