お墨つき/かなりや
 
小さな木の下に
あなたは立っていた
足もとには虫食い穴があいた栗しか落ちてないけど
それでも栗ごはん作るってかたくなに
ぼくの前髪などをあしらう
夜が迫ってくる前に
早く必要な分の栗を拾わなきゃ
きっと今日は二日目くらいの月
そんなんじゃ栗のいがが刺さってしまうからね
足もとには虫食い穴があいた栗しか落ちてないけど
それでも
もうちょっと広く見渡せば
それなりの栗は落ちている
でもあなたは栗ごはん作る気のわりには
真剣味が感じられないほどに
虫に食われた栗ばかり拾うんだ
虫ちゃんのお墨つきだものね
って、本気とも嘘ともとれないような、そんな唇で
秋風を、軽くあしらいながら
言った
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