小川/ただのみきや
 
原初のひとしずく
ささやきのように生まれ
岩肌の乳房
地衣類の産着
山あいを渡る風も目覚めさせないように
産毛を揺らす
静かな吐息
うつらうつら
千々のひかりにあやされながら
死への門出
めぐり合って溶け合って
折り重ねられる歌声よ
悪意のないいたずらのように
摘まれて往くいのち
映して 流して
ひとすじの河となったおまえ


死から生へと繋がる糸は見えず
生から死へと繋がる糸だけが陽光に鳴り響く
水の転がる声
笑うことと泣くことの
喜びと悲しみの
ゆれまどうこころ
浅瀬に勇み立ち
深みに怖け惑い
渦巻いてはまた解かれ
混沌と調和の間でゆらぐ営
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