街の灯り/葉leaf
 


切り刻まれた欲望をあとに
街のしたたる灯りの下で
男はコートの汚れをはらう
生まれ育ったこの街で
いま夜の表面に佇みながらも
男は限りない遠さの奥に囚われている
通り過ぎる日々に受傷して
男は葉のように散る

街はどこまでも散逸し
街路も建物も渦巻いている
過ぎゆく男女に輪郭はなく
男は謎を謎のまま解き放とうとしている
灯りは明るい分いっそうつめたい
街の灯りをゆっくり描画して
男は矢のように飛ぶ

街の血液はすでに凝固した
血の代わりに水銀が巡っている
男の孤独は毎日更新され
男の恋情は毎日継ぎ足される
街の灯りは男を染めるだけで
男はいつも旅の真ん中にいる
故郷の街は憎しみの街だ
街を完全に停電させ
男は火のように消える

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