希望について/カワグチタケシ
 
はじめそれは違和感のある小さな色彩だった。目を凝らすうちに、次第に人間のかたちをとり、やがてその足が地に着いてないことを知る。それは防砂林の松の木で首を吊った遺体だった。ゴンドラが地上に着くまでの7分半。私はその事実をひとりで抱え込まなければならなかった。
 ゴンドラが最下点まで到達するかしないかのうち、ドアを内側から強く何度もノックした。ゴンドラの扉は安全のため内側からは開かない仕組みになっている。ようやく開けてもらったドアから飛び出したが、息を切らした私の報告を聞いた所長の対応は落ち着いたものだった。
「あの防砂林の樹木をよく観察してみなさい。1.5〜2.5メートルの高さの横枝は伐ってある
[次のページ]
戻る   Point(2)