吟遊詩人/ただのみきや
を震わせて
回転させる
磁石のように
終わりのない北へ
黒い糸が続いている心臓から
毛虫の襟巻をした男は立ち上がり
歩きだす
数歩だけ
片言を誰かの耳にトクトク注ぐように
そうして躓く
優美さと不格好さに引き裂かれて
倒壊し
蟻の卵のような愛を幾つも潰しながら
それが何かわからないまま
死らしきものへ顔を埋めた
なんだかわからない遺物にあたまを割られ
吹き出してしまった
帰らない風の全てが
妖艶な微笑みのよう
かつて女だったものは空間にひねりを添え
思考しないものだけが残る
いつまでも
存在と非在の両性具有
《吟遊詩人:2017年2月1日》
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