道端挽歌/北井戸 あや子
真実を虚偽で割ることと、真実を水で割ることは
いったい、どちらが罪深い
しかし天秤が水に傾くことは当然である
たった今
目の前を蜘蛛の子が落ちていった
重力を欺けた試しがない
うちも退院したら体調崩してまうわまあしゃあないけどな最近どないなんこっち次やらかしたらもう戻ってこれんくなるみたいやさかい都合ついたら会おか
ある男が隣人の女を刺した日は
蒸し暑い日だったと記憶している
屋上へ行ったものの
飛び降りるでなく立っていた
そのうち汗が目に入り涙が数回落ちたのだが
伸びていく影や汗へ混ざって最早区別はつかず
ふいに空しくなって
輪っかのぶら下がる部屋へ
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