いのちさめる/ただのみきや
 
そろ頃合いかと
なんとなく数回
白い息を吹きかけてから
低い枝へ近づき手を開いた
やや間があって
ヤマガラは飛んだ
とても弱々しく
一番低い枝へ
掴み損ねて
真白い新雪の上へと落下した
翼もたためずに
嘴も半ば開いたまま
あまり時間をかける訳にもいかなかった
出勤途中なのだ
あまり意味のないことだとも思っている
ただの感傷
余計なおせっかい
水を掬うように
どうやら瀕死であるそれを
ふたたび手の中へ納めると
広げた翼に違和感がある
一番外の羽根以外
翼の付け根あたりまで
定規で引いたように真っすぐだ
飛べないようにされている
面倒なことだ
ヤマガ
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