いのちさめる/ただのみきや
 
真冬の朝
道を歩いていると
飛べなくなった小鳥を目にすることがある
数年に一度
いつも忘れた頃だ
そっと捕まえ
コートの内ポケットへ忍ばせる
少しおくと
飛べるようになって
やわらかくあたたかい
それは手の中から去って往く
いま足元に一羽のヤマガラが
尾羽に糞をこびり付けたまま
巣だってまだ日も浅いのか
羽毛を湿らせて
逃げる力もなく
手を伸べると少し羽ばたき
すぐ 落下して
あきらかな衰弱
辺りの屋根や電線を見回しても
親鳥らしき姿はない
両の掌で包んで
そのまましばらく歩いた
やがて冷たい冬の川べりに
黒々と捻じれた樹がいくつかあって
そろそろ
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