再生の日/ヒヤシンス
本は埃にまみれている。
栞はとうに枯れてその存在がページに染み込んでいるだろう。
価値が価値でなくなる時、不安だけが男の肩にのしかかるのだ。
二つの目は街を見下ろしまた、遠く広がる海を見ていた。
いつかの航海に胸は高鳴り、鼓動が早くなる。
あきらめかけた夢を見ていた。
黒い壁に統一された街並みに行く手を阻まれても怖くはなかった。
俺はもう一度航海する必要がある。
太陽までが黒い日に男は決断した。
自分を精一杯生きてやる。
煙草は灰になった。
枯葉もいつかは散るだろう。
それでもこの世は生きる価値がある。
その中で自身の価値を見つければいい。
絶望を風化させないようにと潤んだ二つの目は、
いつしか自身の内面に向けられ、新たな道標となった。
白茶けた街に始まりの鐘が鳴り響いた。
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