キルト/ゼロハチ
 

泣いた、泣いてしまった
声さえも押し殺してしまったままで
好きなものやきれいなものが

なんだかよく、わからなくなってしまった



傷んでしまった、からだを撫でて


もう一度、海を見に行きましょう


生まれてきて、奪い去って、月も太陽も飲み込んで

またつぎの誰かが幸せな朝を迎えられるように


わたしたちは毎日、自分を切り離していく

声が出なくなったことにも気づかずに
ただ、一生懸命に

誰かが縫い合わせた布きれのように

波間に漂うものになるまで



海はただそこに在るだけで愛だから


わたしは海が好きなのだと思う


赦してほしかったことは何だったのだろう
本当は歌うこともできたのに


わたしは小さなわたしのままで生きていく

今はそれを、願うことしかできないけれど


できるなら今度は


ひとつの幸福を祈るものになりたい



戻る   Point(1)