キルト/ゼロハチ
泣いた、泣いてしまった
声さえも押し殺してしまったままで
好きなものやきれいなものが
なんだかよく、わからなくなってしまった
傷んでしまった、からだを撫でて
もう一度、海を見に行きましょう
生まれてきて、奪い去って、月も太陽も飲み込んで
またつぎの誰かが幸せな朝を迎えられるように
わたしたちは毎日、自分を切り離していく
声が出なくなったことにも気づかずに
ただ、一生懸命に
誰かが縫い合わせた布きれのように
波間に漂うものになるまで
海はただそこに在るだけで愛だから
わたしは海が好きなのだと思う
赦してほしかったことは何だったのだろう
本当は歌うこともできたのに
わたしは小さなわたしのままで生きていく
今はそれを、願うことしかできないけれど
できるなら今度は
ひとつの幸福を祈るものになりたい
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