キルト/ゼロハチ
 
こころの中に
たくさんのものを隠して

おとな、というものになる

たくさんの名前に埋もれて擦り切れながら

わたしは柔らかく小さい手だったことを思い出す


つみ木とスプーン

あたたかい陽だまり


あなた


よく笑う、ということを

わたしはあなたから教えてもらった



つらかったでしょう、そう言われたとき


たしかに雨が降っていたと思います


映画をみながら

わたしは、さめざめと泣いた


言葉はとても心臓を痛くした


おとなだからと言っていたけれど

わたしは自分が思うほど強くはなかった


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