海とマンドリン/天野茂典
 


    外れてしまった隕石少年のように夕日のなかで古書を燃やせり

    赤花を抱く少女の胸はずむ満ち潮になったら産卵しよう

    生み落ちる星の数々ベガまでも藍色に黄ゴーシュよ泣くな

    森の壁漏れてるひかり白神の空気は肺に満ちて旭日

    森のなかキクザキイチゲにくる初潮きょうはぼくのママンが死んだ日
 
    六月の雨森林にしみこみぬフンボルト・エーコーを読みさす鏡

    宇宙から炎になって森林を燃やす隕石ミーシャのマイク

    今宵さすビート畑の海の香の高き満月猫の目光る

    死んでゆく多くの細胞かかえてる研究室の中の老化よ

    教室の痛みよ菜の花何か所も咲きだしている不在の疾風



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