罅/本田憲嵩
しゃくしゃになった
何まいもの苛立ちが
クズカゴのなかにうち捨てられて
押し込められている
机の上には
小さな四角い写真の中で
写真うつりの悪い
写真の中の自分
ありありと見せつけてくる
見たくもない現実
レールを踏み外してしまった
あのとき
罅の入ってしまったものが
拳以外にもあったのかもしれない
なぐられた顔よりも
むしろなぐった拳のほうが痛くて そうして
ひび割れてしまったままの
屋根には霧雨が頻繁に降りしきる
読みあさる詩句さえも錆びてその色彩をうしなう
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