鮟鱇の独白/……とある蛙
ころが一本の釣り針がキラリと光った瞬間俺は口の端に釣り針を引っかけられ妙に明るい海上へ引きずり出された。
その晩始めて月を見た。それは妙にくっきりとした水母だった。
月に見下ろされて俺はホロホロと涙が出た。
俺は親の顔も兄弟の顔も知らないのにこんなところへ引きずり出され
水を無理やり飲まされて、ぬるりとした体はバラバラにされた。
たっぷりある肝も取り出され、舌なめずりした親父たちの胃袋に放り込まれる。
こんなことがずいぶん昔から行われてきたと
仲間から遠い昔に聞いたことがある。
人という妖怪変化がいなければ
こんなに仲間が減ることもなかったろうに
一度気を失ってからずっと
俺は俺のされることを天井の上から
あるいは体の淵からずっと見ている
何ともやりきれない気分だが、
人にすべてしゃぶりつくされたころ
きっと真上にある光の中に消えてゆくんだろうよ
それは俺が頭につるしている提灯とは違って
ずいぶん明るい光でしかもどこから発せられているか見当がつかないが、
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