風船革命/そらの珊瑚
 
かつて風船には二種類あった

空気より軽いガス製と
人間の息製と

人間由来の僕らは
空を飛べないはずだった

小さな手ではじかれて
ほんの少し空を飛んだ気分になって
じべたに落ちて
あとはゆるやかにもれて
死んでいくだけ
ぽーん ぽーん
小さな手にやわらかくたたかれ
薬局のおまけでしかなかったこの僕に
うたかた
夢を見させた

 坊や 苦いお薬ちゃんと飲めておりこうさんね
 きっと次の日曜日までには熱は下がるわ
 そしたらパパもいっしょにピクニックにいきましょう
 おむすびにぎっていきましょう
 桜が咲いているかもしれないわ

あの日のあと

[次のページ]
戻る   Point(19)