夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
七色薬のおかげで、灰色病から克服した幸せが語られていた。
けれど、それを読んでいつも違和感を覚えていた。
『紫陽花が綺麗な季節ですね! 七色薬を飲んでから、紫陽花が銀色に輝いて見えるんですよ。本当に素晴らしい薬です』
『今日の雨の色、素晴らしくなかったですか? まるで鮮やかなピンクのフラミンゴみたいな色の雨でしたね』
『いやぁ、紅葉の季節ですねぇ。真っ青に染まった紅葉が舞い落ちる、いい季節です』
そうして最後の言葉はこれだ。
『七色薬なしには、もう生きていかれませんね!』
灰色の世界の方が、なんぼかマシのように思う。
母からカウンセリング代と病院代をも
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