夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
 
古い町並みは整理整頓され、同じような家やマンションがならびたつ。
 同じような家やマンションの中で、同じような家族が、同じような幸せが作りだされ、すこしでもその幸せになじめない人々は、同じような精神の病におかされていく。その病にかかったものはこういうのだ。
 「なんだか世界が灰色にみえる」
と。
 精神の病は、灰色病と名付けられた。

 そう、告白しよう。私も灰色病と診断されたものだ。あるときから同じ制服の人々、同じ仕事をする人々がいる場所に行けなくなってしまった。そこに無理矢理行こうとすると、冷たい涙がボロボロあふれてたまらない。それに、なんたって色彩がないのだ。ぜんぶ灰色なのだ。
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