夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
十年の時が経ったか分からない。もう、数百年経っているのかもしれない、とも思う。私は老人の服を着て、老人になり、ふりしきる水色の雨の中で飯を食い、花の手入れをし、かなしい顔をした白い犬に花の首輪をつけて見送り、眠り、起きる生活を続けている。
ときおり、外の世界の七色薬から逃げてくる人もいる。いまでは七色薬は七万色薬になり、灰色病でない人間も常時飲むようになっている。
後継者はまだあらわれないが、必要な時には、きっと来るだろう、そうして私もまた掻き消えるのだろう。
今日の花輪はなんにしようか。ボルゾイがこちらを悲しげに見つめている。摘み取った赤の梅の花びらに糸を通し、長い首を飾ろうと思うが、この子だけはいくら花輪を重ねに重ねても、この闘技場から去ろうとしないので、女のように長く美しい白い首はあらゆる種類の花々にうずもれてしまっているのだ。
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