夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
 
とった美しい俳優たちが歌や舞いでもって、はるかはるか昔の、殺し殺され合いうらみの血を流し息絶えた赤い闘士たちと、死にゆく闘士と愛し合いかなしみの赤い涙を流した恋人たちとの悲恋を演じた。観るものは酒を飲み、うちからもってきたつまみをかじりながら、大人から子どもまで、悲恋に涙を流すのだった。
 よい、時代だった。
 しかし、灰色の時代がやってきた。そう、いわゆる、ミヒャエル・エンデによって「モモ」に語られる時代。
 あのときモモは勝利したが、モモ亡き後、灰色の男たちはまたやってきた。
 モモに代わるような女の子はもういなかった。後継者たちはなんとか負けまいと語り継いだが、やがて、すべてが忘れら
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