夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
 

 「あなたは少しいま頭がおかしくなっているのだから、カウンセリングにいきなさい。やる気の出るお薬を頂いてくるといいわ。灰色病を治すいいお医者様を知っていてよ。七色薬というのがあるそうよ。普通の人よりとっても素敵に世界に色が付くそうよ」
母が明るい声で言ったが、その目に含まれている静かな軽蔑を私は感じとる。私は母の理想の器から落ちこぼれた。
「そう、ママの言うとおりにしなさい」
父は経済新聞を読みながらいう。

 ああ、灰色だなぁ。
 七色薬のことくらい、私もネットで調べて知っていた。七色薬から離れられなくなった人々のネットの掲示板や、灰色病からの回復ブログ。同じような文章で、七色
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