つながらない電話/梅昆布茶
 
つながらない電話
部屋の隅のディレクターチェアーで
幾本目かの煙草に火をつける

どの時代の便りがこの暗所に届くかはわからないが
いま結像しているものの光源に想いを致す

混合オイルでしか走れない古い錆びついたモペットで
近所にある新大陸の横断をこころみるも
ちいさな挫折の花火だけが弾けて消える

ことしも大晦日の夜空に幾つもの彗星が彷徨い
ブランクを埋めるためだけに生きてゆく訳 にもゆくまいが
オリオン座のM42を眺めているんだ

荒唐無稽という言い回しが困難な時代に
星の酒場で遺伝子を共有しない兄弟たちと
いつもの彷徨える魂をアテに変哲もない生命論

つな
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